㉙ 中国ビジネスは韓非子に学ぼう!
1. 「昔の理想の中国」と「現在の現実の中国」の乖離 昔の話になるが、団塊の世代である私は高校の漢文で“子曰、六十而耳順”など「孔子の論語」を習った。その影響なのか今でも5000年の悠久の歴史を持つ儒教国家の中国に対して“畏敬と憧憬の念”を持っている。中国でも台湾でも至る所に孔子廟が建てられており無数の中国人の善男善女が参詣している。 ところが、日本人の考えている論語に出てくる昔の「あるべき姿の理想の中国」と現在の「ありのままの姿の現実の中国」とは大きくかけ離れている。日本のビジネスは伝統的に「性善説」で運営されており、信用や安全は当たり前である。それはそれで大変いいのだが、弱肉強食のグローバルビジネスにおいては“お人好し”の日本人は交渉に甘さが出てしまい、その弱点に付け込まれる。 日本では「自動販売機やコンビニのATM」が全国津々浦々至る所に無防備に設置されている。しかし中国には「自動販売機」の盗難などの被害を恐れてどこにも設置されていない。中国に「自動販売機」を設置しても誰かが夜中にトラックで運び去るだろう。このことは「性善説の日本」と「性悪説の中国」の違いを端的に物語っている。 2. 性悪説に基づく中国の銀行での“接客サービス” 「接客サービス」について日本と中国で一番異なる点は、“銀行”での接客サービスである。日本の銀行と同じような「笑顔の接客サービス」を期待して、中国の銀行に日本円10万円を中国元に換金に行った。銀行に入ると、期待していた行員の「笑顔の接客サービス」は全く無かった。その代わりに、私の目の前には小さな穴の開いた防犯用の厚いガラス板があった。そこの狭い穴からパスポートを担当者に差し出す。すると窓の向こうにいる担当者は胡散臭そうな目で私の顔を凝視している。パスポートの写真と私の顔を見比べながら、私がさも“犯罪者”かであるような目つきで見ている。パスポートのチェックが終わると、隣の窓口に行くように促される。指示通りに私の持参した日本円の紙幣を狭い穴から差し出す。するとまず目視で1枚1枚紙幣の「透かし」を本物かどうか確認しているようだ。次に「偽札チェック機」にかけてじっくり1枚1枚チェックしていく。急いでいる私はイライラしてくる。 このようにチェックが厳しい理由は、日本では“日本銀行が発行する紙幣”には絶大な信用があるが、中国では“...