㉓ 中小製造業のグローバル展開 1回目(1/3)

~P2Mの中小製造業の現地法人への適用~

0. はじめに

1 ) P2M関西研究会への参加
私は関西P2M研究会に参加した。そこで様々な分野で活躍中のグローバルビジネスのスペシャリストと巡り会った。事例研究における意見交換により、私はグローバルビジネスについての見識を高めることが出来た。

  
 2008年 オフショア開発の事例研究

   2012年 グローバル事業展開の勘所

私はグローバルビジネスに関心があったので二つの分科会に参加した。

2 ) グローバルビジネスにおける「生き残り」のための勘所の研究

私はITベンダーで、中国や東南アジアに進出する日系製造業の情報システム構築の支援を長年担当してきた。また海外職業訓練協会OVTAで国際アドバイザーとして、海外に駐在員として赴任される方へのキャリアコンサルティング等の人材育成の仕事に携わってきた。

中小製造業が生き残るには「勘所」があるように思われる。関西P2M研究会で吸収した知識とノウハウを活用して、「グローバルビジネスにおける中小製造業のサバイバル戦略」について分析を行う。

3 ) 分析の視点・・「プログラム&プロジェクトマネジメントの視点」からまとめる

中小企業の海外進出については、既にたくさんの書籍が市場に溢れている。それらは海外駐在員による貴重な個人的体験談や苦労話が書かれており、大変実務的で興味深い。しかし、「企業の戦略、リスク分析 、WBS」のようなプロジェクトマネジメントの切り口で統合的にまとめられているものは少ない。ここでは「プログラム&プロジェクトマネジメントの視点」からまとめることにする。

中小企業の海外進出の情報

4 ) 目次  以下の様に3回に分割している。

目次

1. 中小製造業のグローバル化動向

1-1 日本の競争力は国際競争力ランキングによると、
   現在21位と低迷している。

1991年のバブル崩壊までは日本の競争力は世界一であった。
しかし1991年のバブル崩壊以降、日本経済は長期的な景気低迷に陥っている。

日本の競争力は国際競争力ランキングによると、現在21位と低迷している。

1-2 中小製造業が活性化すれば日本経済は再生する

中小企業及び小規模企業は日本の全事業者数の96%以上を占める。つまり日本の中小製造業が活気を取り戻せば、日本経済は再生することになる。

中小製造業が活性化すれば日本経済は再生する

1-3 中小製造業のグローバル化の動向

日本の市場は縮小傾向にあり、一方アジアの市場は急速に拡大している。日本企業の拠点は海外展開され、空洞化が進展している。そのために海外移転を夢にも考えてなかった中小製造業までが海外進出を余儀なくされてきている。 不透明な時代ではあるが、中小製造業は「ピンチはチャンス」だと思って前を向いて進むしかない。

中小製造業のグローバル化の動向

1-4 中小企業の海外進出の状況は?

中小製造業の「どの業種」が「どの地域」に進出しているか? 2014年度の中小企業白書によると、中小企業の海外進出の特長は、業種は「製造業」が多い、進出地域は「中国とアジア」が多い。

中小企業の海外進出の状況は?

2. グローバルビジネスでの失敗の“根本的な原因”

海外進出を“プロジェクトマネジメントの視点”で見ると、数多くの中小製造業が“事業に失敗”している。

失敗の原因は下記の様な事が挙げられる。
マーケティングミックス戦略(4P:Product、Price、Promotion、 Place )の失敗により売上が減少
更には人件費の高騰、中国経済の減速化、日中政府間関係の悪化など
しかし失敗の“根本的な原因”は、外部環境ではなく内部環境にある。中国ビジネスのスピードは日本の10倍のスピードであるが、中国ビジネスの急激な環境変化に対応できなかったためである。それは、市場・顧客ニーズの変化に合わせて、自社のビジネスモデル(企業の仕組み)を変更できなかったからである。

2-1 中国に残るか or アジアの新興国へシフトか

中国に進出している中小製造業では「アジアの新興国へシフト」や「チャイナプラスワン」が真剣に検討されている。しかし冷静に考えると、中国には部品調達など“世界一の製造業インフラ”が整備されている、また販路拡大のための市場としても大きい。
現地法人の経営者はどちらを選択するか「意思決定(選択)」が求められている。


中国に残るか or アジアの新興国へシフトか

2-2 事業の失敗の根本的な原因は自社内にある

事業の失敗の症状、原因、真の原因を分析する。

事業の失敗の根本的な原因は自社内にある

2-3 中国ビジネスでは、事業は失敗していても、
   簡単には撤退出来ない

中小製造業が事業で失敗して撤退しようとしても、中国の労働契約法や税制などの制約で撤退できないことが多い。しかも日本の親会社は現地法人を支援する財政的・人的余裕がない。日本では「中国からの事業撤退」についてのセミナーが盛況となっている

成功もあるが、失敗もある

2-4 撤退の際に考慮すべき点

中国に進出する時に、事前に「プロジェクトマネジメント計画書」の中で、特に「リスク対応計画」を時間とコストをかけて作成し、同時に撤退の意思決定のための条件を予め決めておき、撤退の手順も作成しておく。

撤退の際に考慮すべき点

3. 環境変化に対応できた企業は事業に成功している

中国に進出して、成功している中小製造業のD社の事例を紹介する。D社はリーマンショックなどの外部環境の急激な変化に対しても、タイムリーにビジネスモデル(仕組み)を再構築しながら対応してきた。

3-1 D社の概要

中小製造業の現地法人である「D社」の事例を挙げて説明する。D社の事例は中小製造業の典型的な成功パターンである。下記のD社の企業情報については秘密保持のために内容を変更している。

D社の概要 1/2

D社の概要 2/2

3-2 D社の組織  現地法人における日本人は2人だけ!

給料の高い日本人は減少傾向で、人材の現地化が図られている。
若手の中国人のマネジャーが現場を動かしている。

D社の組織  現地法人における日本人は2人だけ!

3-3 現地法人のD社の日本人総経理(社長)を取り巻く課題

人材不足、金はない、超多忙、毎日がハプニング! 
ストレスが蓄積されてくる。

現地法人のD社の日本人総経理(社長)を取り巻く課題

3-4 総経理(社長)の悩みの具体的内容

総経理は超多忙であるが、市場・顧客ニーズに対応した
「ビジネスモデルの見直し」に力を入れている。

総経理(社長)の悩みの具体的内容

3-4 総経理(社長)の悩みの具体的内容

総経理は超多忙であるが、市場・顧客ニーズに対応した「ビジネスモデルの見直し」に力を入れている。

総経理(社長)の悩みの具体的内容

3-5 現地法人社長(総経理)の生き残り戦略

ダ-ウインの有名な言葉の中に、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである」という格言がある。この格言は、中小製造業の企業経営にも十分に通用する。社会の変革の中で、企業を取巻く経済環境は常に変わっていく。イノベーションは通常「技術的革新」と考えられるが、D社の場合のイノベーションは「ビジネスモデルの見直し・構築」である。

現地法人社長(総経理)の生き残り戦略

3-6 ビジネスモデルキャンパスで考える

経営環境の変化に対応できない企業は生き残ることができず、最終的には淘汰されることになる。D社の場合は、経営陣はどのようなビジネスモデルで事業を行うかが成功と失敗の分岐点となる。

ビジネスモデルキャンパスで考える

3-7 D社の海外展開の歴史を振り返る

中国に進出している日系の中小製造業では電機・自動車の部品製造の企業数が多い。D社のグローバル展開の歴史は以下の通りである。


D社の海外展開の歴史を振り返る

3-8 もはや“ものつくり”だけでは
   中国・アジアの企業に勝てない


競争力を高めるために、D社のビジネスモデルは①⇒②⇒③⇒④⇒⑤と進化している。

“ものつくり”より“仕組み作り”!

3-9 D社の海外展開の拡大により、業務範囲は
   急速に拡大する


ビジネスモデルは見直される度に、業務プロセスは追加・変更されている。

D社の海外展開の拡大により、業務範囲は急速に拡大する

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